私は徳田そら、社会人3年目の25歳。
やっと仕事にも慣れてきたけど、なんていうか……新入社員ブーストが切れて、ずっと疲れがとれない感じ。
自分の好きなものだけに夢中になっていた幼い頃とは違って、社会人になると仕事のことに将来のこと、いろんなことを考えなきゃいけなくて、最近は全然余裕がない。でも、これが大人になるってことなのかな……。
「(そら)はあ、節約のためとはいえお弁当作り面倒。たまには揚げ物のおかずを入れたいけど、毎朝そんな余裕ないし……」
「(カララッチ)それなら冷凍からあげを使えばいいカラ!」
「(そら)わっ、何この変な生き物!?」
突然目の前に現れた、しゃべるぬいぐるみ。
「(カララッチ)ボクはからあげの国から来た妖精、カララッチ! 」
「(そら)からあげ……って、何? 聞いたこともない……なんのこと?」
「(カララッチ)思い出して! そらちゃんはよーく知ってるはずだカラ、からあげという『鶏肉を揚げた料理』のことを……!」
「(そら)からあげ……どこかで聞いたような……からあげ……」
そういえば、このしゃべるぬいぐるみの胸についている茶色くて大きくておいしそうな物体。どこかで見たことがある気がするなあ……。うーん……。
はっ! 思い出した!!
私は小さい頃、お母さんの作ってくれるからあげが大好きだった……!
「(そら)えっ!? どうして? なんで今まで私、からあげのこと忘れてたの!?」
「(カララッチ)やっと気づいてくれたカラね……そう、この世界はからあげが存在しない世界線!からあげという概念が歴史から丸ごと、何者かによって消し去られてしまったんだカラ!」
「(そら)えええー!?」
「(カララッチ)そして、世界から消された記憶はもうひとつ……からあげを守る魔法少女たちの記憶。そらちゃんは、夢と希望とからあげを守る『からあげ魔法少女・カラット』だったんだカラ!」
「(そら)はああ!?」
「(カララッチ)わかっていることはひとつだけ……ある時、からあげを激しく憎んだ誰かが世界を呪い、からあげを消し去ってしまったんだカラ」
「(そら)ひどい! からあげ好きの人から楽しみを奪うなんて…!」
「(カララッチ)さあそらちゃん、カラットに変身して一緒にこの世界にからあげを取り戻すカラ!」
「(そら)待って待って! いきなり言われてもそんなの……だいたい魔法少女って、もう私25歳なんですけど!?そもそも、なぜ私なの!?」
「(カララッチ)からあげのことが大好きで想いが強い、選ばれた人間だけが『からあげ魔法少女』になれるんだカラ。そらちゃんのからあげが好きな気持ちは誰にも負けないでしょ?大丈夫、今カラでも間に合います!」
「(そら)そんな、今から入れる保険みたいに言わないで!?」
「(カララッチ)いいカラ変身するカラ! さああと一息! 変身の呪文を思い出して……!」
「いちたすいちはに さんひくいちはに」と埋めると「1+1=2 3-1=2」と正しい式になる。答えは「たびだち」。